鷹の爪のひっかき傷【平鯵とトマト、獅子唐のアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ】
私はよくスパゲティを茹でて食べます。
一人暮らしが長かったからです。
電気炊飯器のある時代でさえ、「お腹減った」からお米を研いで炊けるまで待つということができない人間でした。駄目日本人。
それに、ご飯を一食分だけ炊くというのはなかなか難しいので、乾麺を茹でて料理をする機会がなんとなしに増えていったのです。
特に良く作っていたのはペペロンチーノに代表されるオイルパスタでした。
何故、ナポリタンじゃなかったのか?
理由はいくつかありまして・・・思い出して悲しくなってきました。
きっかけは、学生時代に勤めていたバーでまかないに初めてペペロンチーノを作ってみたのですが、オイルを乳化させたり、にんにくの香りをゆっくり出したりなんて知らなかったもので、マスターから「なんだこの油そば?」と言われたことでした。
かなりショックだったんでしょうね。それ以来、試行錯誤が続きます。
そんな学生時代にお付き合いしていた女性とよく行っていた神戸のビストロがあったのですが、そこの「ベーコンとキノコのペペロンチーノ」が本当に美味しくて。
バケットでお皿をぴかぴかにするくらい大好きでした。
お気に入りのお店でしたが、その彼女にもフラれ、足が遠のき、大好きな「ベーコンとキノコのペペロンチーノ」が食べられなくなったのです。
大学を卒業して入社した会社は福岡本社のメーカーでした。ですので、新入社員の当初は博多や天神で美味しいものをたくさん食べてました。そんな折、とあるスパゲティ屋さんで「イワシのオイルパスタ」というのを頂きまして、魚のペペロンチーノのおいしさにびっくりしたんです。
半年ほどして配属が決まり、素敵な福岡生活もどえらい田舎に赴任したことで終わってしまいました。友達もできない暗く辛い社会人生活を送る中で、ほとんどの同期が楽しく暮らす福岡に、そしてあの「イワシのオイルパスタ」に複雑な思いを持つようになりました。
そんなこんなで、自分でもあまり意識しないうちに随分とこの料理に執着するようになっていたみたいです。
自分がトマトソースやクリームソースのパスタを作るようになったのはごく最近ですし、スパゲティ以外の麺を使ってパスタを作ることはほとんどしません。
だから本当の意味で、イタリア料理が好き♪、とか、パスタ大好き男子♪とかそういうことではないんでしょうね。
今となってはそんな昔の事なんて思い出すこともなく、オイルパスタなら体が勝手に動いて料理が出来上がるくらいになってしまいましたが、ふと、普段思い出しもしない記憶ってのは実は意外にたくさんあるんだな、ということに思い至って、この日は少々感傷的な気分でフライパンのオリーブオイルに沈んだ、細かい泡をたてているニンニクを眺めていました。
【平鯵とトマト、獅子唐のアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ】
鯵は中くらいであれば半身で一人分。
トマトも中くらいのものを一個。
ししとうを5、6本。
にんにくは2片くらい。
まずは包丁の腹か空き瓶でシバいて、潰してから粗みじんにしたにんにくとタネは取り除いた鷹の爪を、熱をかけていない状態のフライパンとオリーブオイルに入れ、ゆっくりと火にかけます。
ここからお鍋にお湯を沸かしたり、材料の下ごしらえを始めたりして、時間はたっぷりあるので、ゆっくりゆっくり弱火でにんにくと鷹の爪を煮出して下さい。
麺を茹でるお湯は「ちょっと塩っぱい・・・?」と思うくらいはしっかり塩を入れて下さい。
トマトは湯むきして、適当にカット。この料理では煮詰めるので、水分が出ることを気にしませんからタネの部分はそのままにしてあります。
鯵は塩コショウして、皮目と反対側をフライパンに当てて、弱火のままゆっくり焼きます。フライパンはフタをして下さい。ある程度魚の身に火が通ったらトマトと獅子唐を入れてフタをして火を通します。
麺が茹で上がりそうになったら、フライパンから鯵とにんにくと鷹の爪を取り出して別のお皿に避難させて下さい。
そして麺と茹で汁をフライパンに移して、ソースを煮詰めつつ、麺を茹できります。
調子に乗ってここで洗い物とかやっていると、だいたい麺が柔らかくなりすぎるので集中して下さい(笑)
この日は乾燥バジルとパルメザンチーズを振って頂きました。